「物価2.6%」に騙されるな。台所の物価は別物です


「物価2.6%」に騙されるな。台所の物価は別物です





ニュースは「物価2.6%上昇」と言います。でもそれ、「平均の世帯」の数字です。食費と光熱費でカツカツすぎる私たちの台所には、別の物価があります。値段は向こうが決める。払うのは私たち。その力関係が、数字の裏にあります。

1. 物価は2.6%上昇。安くなったのは米だけです

スーパーで魚の値札を見て、手が止まる。光熱費の請求書も、去年より重い。総務省が10月30日に公表した東京都区部の消費者物価指数(2026年10月分、中旬速報値、2025年=100)では、生鮮食品を除く総合は前年同月比2.6%上昇。生鮮食品を含む総合では2.8%の上昇でした。

内訳を見てください。生鮮食品を除く食料は3.0%上昇。米類は昨年の高騰の反動で31.3%下がりましたが、外食は4.6%、生鮮魚介は14.2%、肉類は6.4%。安くなったのは、米だけです。

エネルギーは2.2%上昇し、前月の下落からプラスに転じました。電気代は1.7%、都市ガス代は4.9%の上昇。政府の電気・ガス料金支援が9月使用分で終わったことが背景です。灯油は11.6%上がり、補助の続くガソリンだけが2.3%下がりました。

これを受けて首相は10月29日、電気・ガス料金への支援を12月から3か月間再開すると表明しました。標準的な家庭で3か月7,000円程度軽くなるといいます。ガソリンへの補助は、12月から少しずつ縮める方針も示されました。支援は気まぐれに止まり、気まぐれに戻る。バグってるとしか言いようがありません。振り回されるのは、いつも払う側の私たちだけです。

2. 「平均の物価」は、貧しい家計を軽く映すカラクリです

問うべきは、この「2.6%」が誰の物価かです。消費者物価指数の品目ごとの重みは、家計調査に基づく「平均世帯」の支出の中身から作られます。でも、支出の中身は所得でまったく違う。消費支出に占める食料費の割合=エンゲル係数は、総務省「家計調査」(2024年)をもとにしたニッセイ基礎研究所の整理で、年収が最も低い階級で33.8%、最も高い階級で23.9%でした。ちなみにエンゲル係数の名の由来は、19世紀ドイツの統計学者エルンスト・エンゲル。1857年の家計研究から生まれた言葉です。

食料と光熱費は、削れない支出です。同じ上がり方でも、所得の低い家計ほど負担は重くなる。公式の「平均の物価」は、私たち現場の人間の物価を軽めに映す仕組みなんです。

値段を決める側も見てください。電気・ガスは地域ごとに一つの会社が握り、燃料費の変動は料金に上乗せされる。値上げの痛みは利用者に回り、料金収入は事業者に残ります。

ロイターの報道では、2023年の開始以来の国費は予算ベースで累計約5.6兆円。その元は、税を通じて私たちが負います。買い物で払い、税でも払う。エグい二重取りです。その一方で、価格を決める仕組みは手つかず。値段は向こうが決め、痛みはこっちが引き受ける。物価問題とは、結局この力関係の問題です。

3. マルクスは言ってます。値上がりは「働く能力の値段」の話です

150年以上前、マルクスは『資本論』第1巻第6章「労働力の売買」で、値上がりの本当の意味を書いていました。働く能力そのもの(労働力)の値段は、それを保ち、作り直すために必要な生活手段(暮らしに必要なもの)の値段で決まる、と。食料、衣服、燃料、住居の価格が上がれば、働く能力の値段も上がる。そういう仕組みです。

ただし、マルクスは注意もしています。働く能力の値段の決まり方は、他の商品と違う。「何が『必要な生活』か」には、その国の文明の水準や、働く人たちが作ってきた習慣と要求の水準が入り込む。歴史の中で決まってきたものだ、ということです。家族を育てる費用も、働く能力の値段に含まれます。

この物差しで見れば、食料とエネルギーの値上がりは、家計のやり繰りの問題じゃありません。働き続けるための生活費そのものの上昇です。賃金が「平均の物価」にしか追いつかなければ、その差は食事の質の切り下げ、暖房の節約、教育費の切り詰めとして現れる。必需品の価格は、賃金をめぐる闘いの出発点なんです。

4. 補助金は数字の化粧です。値段を決める側は手つかずです

矛盾はここにあります。政府は多額の補助で指数を押し下げながら、価格を決める仕組みには手を付けない。統計局自身、補助などの政策が指数をどれだけ押し下げたか計算して公表しています。つまり、公表される物価上昇率は、政策で化粧された姿でもあるんです。「物価が落ち着いてきた」という発言と、生活費の重さが一致しない理由の一つはここにあります。化粧した数字を「対策の成果」と語るのは、マジで偽善です。

12月に再開される支援も3か月限り。3月分については、首相も「動向を見極める」と述べるにとどまりました。ガソリン補助の縮小も始まります。暖房が増える季節に、光熱費の負担が家計に戻ってくる恐れは消えていません。

問いは一つです。必需品の価格を誰が決め、働く人の生活費を誰が背負うのか。答えの作り方は二つ。賃金の要求を「平均の物価」ではなく、食料・光熱費など生活必需品の価格に合わせて作ること。エネルギー価格に国が口を出して抑えることを求めること。これが、物価高への根本的な回答になります。

5. あなたの物価は、買い物かごの中にあります

2.6%という数字は、平均の物価であって、生活の物価じゃありません。ガチで別物です。物価には階級の顔があります。エンゲル係数の開きが示すように、必需品の値上がりは、もっとも余裕のない家計をもっとも強く打ちます。「上がり方が弱くなった」だけで、生活の改善は語れません。

使える視点はこれです。「物価は落ち着いてきた」と聞いたら、平均を見ないでください。自分の買い物かごを見てください。食費と光熱費の合計が、去年より何円増えたか。その数字こそが、あなたの物価です。

その買い物かごを、今の給料でまかなえていますか。まかなえないなら、それは家計のやり繰りの失敗じゃありません。賃金が生活費に届いていない、という話です。足りない分は、決める側の懐に残っています。

労働者の意見

労働者ちゃん

「物価は2.6%上昇」? その数字、誰の台所の話なの。レジで魚の値札を見ると手が止まるし、生鮮魚介は14.2%、灯油は11.6%も上がってる。低い所得の層では食費が支出の33.8%を占めるんだよ。金持ち世帯の23.9%と一緒に平均しないで。私が向き合っている物価は、2.6%なんかじゃない。

でも、正直に言うと、揺れるときもある。米類は31.3%下がったって聞くと、「少しは落ち着いてきたのかな」って思っちゃう。職場の同僚と話しても買い物かごは人によって違って、子育て中の同僚は食費を削れないって言うし、一人暮らしの同僚は光熱費の請求に青ざめてる。かごの中身は違っても、「給料が足りない」は同じだった。だから私一人の感覚を、世間全体の答えみたいに言いたくもないんだよ。

ねえ主、聞いていい? 補助金って、値段を決める力を会社に残したまま、税金で穴埋めしてるだけじゃないの? 電気・ガスの支援で3か月7,000円程度軽くなるのは助かるよ。でも補助金の累計は約5.6兆円で、その元は税金だよ。「対策しました」って言われても、私は納得できないよ。

主の意見

主

はっきり言います。2.6%は嘘の数字じゃありません。「平均の買い物かご」をもとに計算された統計の事実です。問題は、それが何を映していないかです。食費の割合の開きが示すように、同じ値上がりでも、痛みはまったく同じじゃありません。だから「物価は落ち着いてきた」という解釈は、2.6%からは絶対に出てきません。

補助金も同じ構造です。電気・ガスの支援は3か月で7,000円程度、請求を実際に軽くはします。でも、料金を決める力は電力・ガス会社の側に残ったまま。しかもその国費の累計は、税を通して私たちが負います。痛みを一時的に和らげても、値段を決める力関係は1ミリも変わらない。ここが本質です。補助金は対策ではなく、黙らせるための化粧にすぎません。

要求は具体的にします。政府と電力・ガス会社は、料金と値上げの根拠を全部公開し、生活必需品の価格を生活を壊さない水準に抑えろ。働く側の賃金要求は、「平均の物価」ではなく食料と光熱費という実際の生活費に合わせて作れ。職場では正規・非正規を問わず生活費の実態を持ち寄り、個人の節約の話を、賃金と価格への共通の要求に変えるんです。

期限が切れれば終わる助けに頼っていては、根本的には何も変わりません。値段を決める力そのものを、作る側・使う側の手に取り戻す。その一点に、物価問題の究極の答えがあります。


参考

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